日本語のディスレクシア交通事故などによる後天的な失読症=ディスレクシアだけでなく、おそらく先天的、または生後ごく早い時期から失読症=ディスレクシアであるケースはごく一般的にありえます。孫引きで大変恐縮ですが、Salter and Smytheさんたちが1997年に調べた調査によると、日本のディスレクシアはおよそ6%程度いるようです。 Multilingualism, Literacy and Dyslexia: A Challenge for Educators page13 table2.1 より イタリアは言語構造的にディスレクシアが少ないと言われており、1.3%程度です。その他の国では、学力No.1のフィンランドが10%であったり致しまして、ディスレクシアは決して珍しいものではないようです。 日本語のディスレクシアの場合、ひらがなやカタカナは何とか習得できる場合が多いのですが、10歳前後から漢字の書き取りに苦労するケースが増えます。漢字は低学年ではほとんどが象形文字か指事文字ですが、中学年ごろから形声文字が増えてきます。形声文字は文字の形と意味が直につながりにくいのでイメージしにくいようです。また、同じ部首の違う文字をかく間違いも多く見られます。こうした文字そのものの書き間違いはディスグラフィアと呼ばれます。 無論、努力不足で漢字の書き取りが不十分な生徒さんもいます。しかし、ディスレクシアの場合には、知的レベルや本人の努力ににつかわしくない、言語における「読み・書き・聞き」能力の不完全さが見られます。ディスレクシアの国際的な調査を行ううえで、それぞれの言語特有の難しさというものがあり、日本語ではおそらく漢字の読み書きが最も難しいものの一つになるでしょう。 漢字のディスグラフィアが疑われた場合には藤堂方式の「漢字なりたち辞典」を資料としてお渡ししています。 ISBN 4-315-51201-4 教育社 編 日頃の予習としては国語のみならず、他の教科書も全てルビを振る必要が出てきます。「理解できない」=「読めない」ではありませんが、教科書が読めないのはとても不便です。ディスグラフィアの場合には文字を一文字一文字植え込むように指導していく必要があります。教科書を読むのが辛いというだけの理由で他の教科まで自信を喪失してしまうことは絶対に避けなくてはなりません。 目が不自由なら眼鏡をかけるように、ディスグラフィアやディスレクシアの場合は漢字にルビをふるということを認めてくれれば随分と違うだろうと思います。場合によっては文節の区切りを入れておく必要もあるかもしれません。教育援助員のような人が横でささやいてあげるのもとても効果があるでしょう。 |